連載「同棲している彼氏が出ていった話」

同棲している彼氏が出ていった話:3

CREDIT 文・Shion Oyake

そんなこんなで彼から返信が来た。10センチくらいの長文で。

もう自分は何をしたらいいのかわからない、もうシオンに申し訳ない、僕たちの関係は解消すべきだ、金は払う。

要約したらこんな感じ。

冷静に、もし別れるとしても100万単位での婚約破棄や引っ越し代がかかるし、何も考えていない人に合意書もなく払わせることもできないため、電話を提案。
15分くらい待って欲しいと言われ、彼の中での15分である1時間が経過しようやく電話がかかってきた。

私はHUNTER×HUNTERで学んだ。
答えは沈黙。

電話ではひたすら黙る。黙りながら、相手の話を聞き、たまに相槌をうつ。
もちろんもしもの時のためにiPadでの録音は回しながら、相手の話を聞く。
私は自分の寄り添い力に期待していないので、相手の言っていることは全部手元のiPhoneでGemini先生にうつ。そうしたら先生は私の本音を代弁してくれ、相手をまずは落ち着かせるための回答文を教えてくれる。
そうやって、クラピカとGemini先生に助けてもらいながら、まずは相手を落ち着かせる。
彼は現在仕事も家も放棄して放浪旅に出ているくらい何も考えていないため、電話して起こっていない声を聞かせたらすぐに落ち着いた。

私はジャルジャルで学んだ。こうきたらこう!ってやつ。
相手が狂ってるなら、それを越えればいいだけの話。

彼が、わからない。僕は何もわからない。と連発して逃げるのであれば、こちらも同じ。
私も何もわからない。自分という存在がわからない。相対的な自分と接する機会が多すぎて、絶対的な自分を見失っている今日この頃、私が今考えていることはTwitterから得た常識という名の偏見なのか、私が考えてたどり着いた結論なのかわからない、だから何も言葉が出てこない。
そういうことをひたすら、2時間かけて話した。2時間かけて上記の内容しか話していない。

相手の発話ペースに合わせ、キャパシティの少なさを超えると、だんだんと彼が私に優しい声かけをする番がやってくる。そうしたらこっちのもんだ。
そうやって相手を落ち着かせ、毎日生存報告をするような関係性まで落ち着かせた。

死者と話せたらどうする?

もはや彼は死んだも同然だ。ただ逃げ回り、家に帰ってこない。LINEしても特に元気な返事もなく、ただ逃げ回る。中身のある回答はほぼできない。屍。ゾンビ。ただのウォーカーである。
そんなゾンビをLINE上で捕まえ、わかりそうな範囲から声掛けを始め、だんだんと私に頼ってね!という元気で頼り甲斐のある彼女を演出する。
そうすると今考えている、仕事を放棄していることへの不安、仕事を自分は続けられるのかの不安を話される。
上記で話したクラピカとジャルジャルの知恵のおかげで、まずは仕事先の一番仲良い人に連絡を入れさせることに成功した。

ふと思う。
私は何をやっているんだろう。
このまま事故で彼が死んでいたら楽だったのではないかとまで思うくらい、
もう今は面影のない彼の言動を見て、心を痛めている。
もちろん無事で生きていて嬉しい、一人で放浪していて嬉しい、その気持ちが大きい。

しかし、家に帰るかを尋ねると、

「わからない。」

の一点張り

それからまた返信が途絶えてしまった。
最後に彼は、地方の空港に行ってみようと思うと話していた。
福島空港あたりだろうか。
パスポートは家にあるので、海外に行く可能性はないが、また遠くに行ってトラブルがあると大変なので、心配だから遠くに行かないでほしいな、と声をかける。しかし逆に遠くに行ってしまいそうな雰囲気が漂う。

小さい頃からよくメディアでも本でも目にするし、誰もが考えたことがあると思う。
死んでしまったあの人と話せたら。

死んでしまったらもう話せない。何も期待できない。だからこそ人は前に進める。
まだ話せる、中身はないけど。
まだ期待できる、ずっと逃げ回ってるけど。
そんな状況にいると、人はずっと待ってしまう。

どうしたもんかなあ!


ジャルジャル:こうきたらこう!のネタ

HUNTER×HUNTER:3話「答えは沈黙」

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